end of shite

敬称略日記

脚は2本しかないしコンバースしか履かない

ろくまんえんの靴を買った。

 

家賃とほぼ同額の靴だ、2ヶ月連続で帰省する人間のやることとは思えない。

にまんえんくらいのものがセールでいちまんろくせんえんになったものを買う予定だった。付き添いで行った表参道でろくまんえんの靴を試し履きしてしまったわたしにはいちまんろくせんえんの靴が急に野暮野暮の野暮に見えてきて恐ろしかった。一度生活レベルを上げると下がることは難しいのだ。 

ろくまんえん(税込でろくまんろくせんえん)の靴を誰かにお得だと言ってもらいたい、という気持ちに支配されたわたしは会社で仲良しの女たちに画像を見せろくまんえんなんだけど…と言うとめちゃくちゃかわいい買うべきだと声を揃えるので鼻息を荒くした。その女はななまんえんがセールでごまんえんだったという靴を履いている。何もお得ではないしだれも冷静ではない。

これだから洋服関係の仕事は恐ろしいぜ…と思いながらももう買うことにしているわたしは店舗に電話をかけ在庫を確保し(ラスイチだった)残業後ダッシュで店舗に向かった。

収入と支出の歪さに震えながらカードを差し出し生活のことを思った。ぜったいに毎日弁当持って行こう、副業もたくさん出よう、パック寿司も控えよう

生活が不安になり138円をケチって定期券内の駅まで歩いた。案の定迷ったがアドレナリンが出ているので平気だった。聴いていたラジオでレンタル彼氏についての知識を深めた。

買いたての靴は底がツルツルなので靴修理屋で裏張りしてもらうことにした。ついでに昔勤めていた会社から餞別的にもらったごまんえんの靴と店頭に立っていたときに精神をやられて発作的に買ったよんまんえんの靴も修理してもらうことにした。

わたしは全ての服や靴をどこでいつ頃買ったか覚えていて、それは田舎でファッションに飢えていた若いわたしの執着心のなせるやつの後遺症だ。覚えてない、テキトーに買ったと言うときのわたしは謎のカッコ付けをしている。

修理はきゅうせんえんかかった。日曜日で混雑する中野ブロードウェイで生活を思った。でも本は買った。最近はコンバースしか履かないのにな、と思いつつ団子を食べながら帰った。

靴箱に入りきらないほどの靴、こんなにもあるのに何もないような気がする洋服、全部抱えて死ねたら